ワタベヒツジ 漫画家 プロフィール画像
『勉強でも、運動でもそこそこだった。だからずっと何かで勝とうとしていた』幼少期を海外で過ごした漫画家ワタベヒツジさんは、日本には何か足りないと語った。その真意に迫った。

2018/10/06

ワタベヒツジ イラスト

勉強はいまいち。運動もそこそこ。 
 
誰にも、勝てない。そんな感情を抱いたことがある人は多いはずだ。 
 
幼少期を海外で過ごした、東京藝術大学出身の漫画家ワタベさんは『勝てない』というコンプレックスにどう向き合ったのか。 
 
日常の違和感と真摯に向き合う、ワタベさんに漫画家としてのLIFESTYLEを伺った。 
 
では、楽しんで!
 

勝てる場所を探していた少年期

スタイル
早速、質問させていただきたいのですが普段はどのような生活をされてらっしゃいますか?
ワタベさん
普段は基本的にずっと漫画を書いているのですが、それを長時間やっていると部屋で悶々としてしまうので稀に夜の新宿に出かけに行ったります(笑)
スタイル
夜の新宿ですか!?
ワタベさん
ガールズバーのキャッチしてる人とか、夜の新宿をウロついてる人とかキャバ嬢をナンパしていくとか、そういう刺激を得ることで新しい感覚を身につけることにしてます。
スタイル
それめちゃくちゃ面白いですね(笑)
それって漫画の題材に繋がったりするんですか?
ワタベさん
改めて繋がっているのかというと分からないんですけど、とにかく自分の中に面白い経験を蓄積させると面白い人間になりそうな気がするんですよ。だからこそ、他の人が普通はしないようなことしてます。
スタイル
僕も新宿にいく機会は多いですけど絶対にしません(笑)
ワタベさん
ですよね(笑)
そうやって生活を送ると、面白い体験に遭遇して自分が育っていく感覚はしますよね。
スタイル
ワタベさんは意識的に面白い人間になっていこうとしてるんですね?
ワタベさん
そうですね。普通はみんなこういう発言しないだろうなという場面で、何も思い浮かんでないのに『いや!でも!』と言い出してみたり、変なことをしてることは多いです(笑)
スタイル
ワタベさんはメンタルかなり強いですね(笑)
ワタベさん
確かにメンタルは強い方ですね。何かあったからというわけではなく、普段からやってるのである意味麻痺してるんだと思います。
スタイル
それって、普段からやられてるんですか?
ワタベさん
そうです。普段の会話から『自分を更新しないと』と思ってずっとやってたら変な性格になりました。(笑)
スタイル
普通の人がしないような会話の流れを始めるようになったのはいつからですか?
ワタベさん
これって根深くて、正確ではないんですけど恐らく中学くらいですね。
スタイル
それをやり始めるにあたって明確なきっかけはあったんですか?
ワタベさん
僕は、勉強はできなくて、運動も普通よりちょっとできるくらいだったんです。運動も色々やったんですがやってる割には普通だったんですよね。それが、すごくコンプレックスでした。『何しても勝てない』っていう意識が芽生えてきたんですよね。
スタイル
それは、ワタベさんなりにどう解決したんですか?
ワタベさん
中学のころって、勉強・運動・遊びしかないわけで、何で勝とうかずっと考えているうちに、話すことなら僕にもできると思ったんです。
スタイル
勝てる場所は話すことしかないという判断を下したんですね?
ワタベさん
自分の場所を作りたいと無意識で思ってたんでしょうね。それで『スベってもいいからスベらない話をするか』みたいなことを言い出したりするようになったんです。
スタイル
ワタベさんが面白い行動をするようになったきっかけは伺えたと思うのですが、中学時代のワタベさんの性格を作り出したきっかけはあったりしたんですか?
ワタベさん
僕って、幼い頃から海外を行き来する生活を送ってたんです。当時、カナダにいた頃すごく面白い生き方をしているおじさんがいたんですけど、その人と話していたことの影響はあるかもしれません。だからこそ小学校・中学校で過ごしていても、どこか文化が違うという思いはありましたね。
スタイル
文化が違うということはなんとなく理解できるんですが、カナダでは何をしていたとか覚えてますか?
ワタベさん
山に沢山登ったりとかオーロラをみたり、湖にボートで出かけて寝たりしました。
スタイル
確かに、日本じゃ絶対やりませんね(笑)
ワタベさん
他にも、一ヶ月キャンプカーを借りて旅みたいなことをしたんですが、そういう体験は性格に影響している気がします。幼少期の面白い体験から、面白さに対する欲求が高まったのかもしれません。
スタイル
海外にいた頃が面白さ100%だったとして、日本に帰ってきたら60%くらいに感じてしまうってことですよね。
ワタベさん
そうですそうです!
だから、自分で何かを起こして40%を埋める行動をしているんだと思います。
スタイル
それが、先ほどの夜の新宿に出かけることだったり、『でも!』と会話を変えるような行動に繋がるんですね(笑)
ワタベさん
そうですそうです!
だから、自分で何かを起こして40%を埋める行動をしているんだと思います。

トムクルーズにタオル渡す仕事

スタイル
改めてなんですけど、漫画家になろうとしたきっかけはいつ頃だったんですか?
ワタベさん
『よし、漫画家になろう』と思った時を明確に覚えていて、それは大学で就活を始める時期のことでした。
スタイル
就活の時期って確かに色々考えますよね。実際にどんなことがあって漫画を選ぶことにしたんですか?
ワタベさん
僕は東京藝術大学出身なんですが親戚に東京藝術大学出身のデザイナーが二人いるんですよ。最初はデザイナー志望だったことから大手広告代理店に行こうとしたんですね。
それこそ、大手広告代理店に就職してコネクションを作って独立するみたいな王道を掲げていたんですけど、それを僕が初めてその道を発見したかのように親戚のデザイナーに話したんです。

ワタベヒツジ 漫画

スタイル
実際どのような返事が帰ってきたんですか?
ワタベさん
その話をしていたら、急にミッションインポッシブルのDVDをつけはじめて『この現場でトムクルーズにタオル渡す仕事と、広告代理店どっちがいいと思う?』って言われたんですよ。僕はずっと映画とかアニメ、漫画のようなエンタメが好きだったので『それならタオル渡したい』と思ったんですよ。
スタイル
確かに、純粋な感情だとそうなりますよね。
ワタベさん
そうですそうです!
その場では反論したんですけど、家に帰ってシンプルに採算ド返しで考えたときにタオル渡すだけの仕事かもしれないけど、少しでも自分の好きなものに関われるならそっちがいいと思ったんですよね。そこでエンタメの中にあって、明日から自分一人で始められる事を考えたときに絵が描けるから漫画という選択肢を選んだんです。
スタイル
確かに、リスクを限りなくゼロにしたとき出した答えってシンプルで自分に正直ですよね。

自分の中で『思えること』を描く

ワタベヒツジ 漫画

スタイル
漫画の題材っていつ浮かんできますか?
ワタベさん
自分が生きてきてずっと感じていたことや思っていたことを、自分で掴めたときですね。『なんか死にたくないなぁ』とか違和感は感じるんだけどその理由をわかっていない時っていうのは結構あって、その理由をずっと考えているとそのモヤっとして散らばった違和感を一つにまとまるタイミングがあるんですよね。そのときに、それは主張できる感情だなと思っていたりします。
スタイル
HUNTER×HUNTERでいう所の『練』した後に『凝』ができるようになったタイミングみたいなことですよね?
ワタベさん
あ〜!そうです!(笑)
本当にそんな感覚です。
スタイル
それを、漫画にするんですよね。
ワタベさん
そうですね。それは『何を伝えるか』の部分にするところなので『どう伝えるか』は後で考えます。
スタイル
『どう伝える』かというのは実際に何をするんですか?
ワタベさん
『どう伝えるのか』っていうのは、『何を伝えるか』のために必要な設定のことですね。自分が何を伝えたいのかが明確にあって、それに必要なストーリーを考えます。その過程では大前提として面白くなきゃいけなくて、でも面白いものを受け取った後にじんわりと本当に伝えたかったことが残るといいなと思っています。
スタイル
面白いことで伝わりやすくなったりすることはありますもんね。実際に漫画を描くときにこだわりってありますか?
ワタベさん
読者の方にとって優しい作品を心がけています。
スタイル
優しいとはどういうことですか?
ワタベさん
ん〜。自分が『思える』ことって自分が体感したことや、実感したこと、痛感したことですよね。例えば、ブラジルですごく苦労している人の気持ちにはなれませんよね。その感覚は描けるかもしれないけど、実感の伴わないものになってしまうなと思うんです。だからこそ、『柔らかい目線』で自分の作品をチェックして読者に届けたいという思いがあります。
スタイル
確かに子供のころアフリカの子供が空腹なんだからご飯を残さずに食べなさいって言われたところで、良し悪しを別として実感は伴わなかったですよね。本当に給食を残さない子は、そこで怒られた子より本当に食いしん坊な生徒でしたもんね。
ワタベさん
確かに(笑)
一番、『思えてる人』にならないといけないんですよね。

ワタベさんにとって漫画家というLIFESTYLEは?

自問自答

一年間、ずっと。本当にずっと自問自答してたんですよ。 
 
ノートに自分が思っていることや、本を読んで学んだ知識を並べて自分と照らし合わせて自分には何が表現できるのかずっと考えてきた。 
 
ノートの始まりの方は本当に何も考えられなくて1ページもすかすかなんですよ。何も分かってないと何も考えられないんですよ。 
 
徐々に考えられるようになってノートも1ページびっしり埋まるようになっていきました。 
 
そうすると考えが地に足ついて、歩けるようになってくるんです。そしたら、いつの間にか走れるようになってたんです。 
 
 
そう、ワタベさんは話してくれた。 
 
そんな、ワタベさんをSTYLEで応援していきます!

ワタベヒツジ 漫画

ワタベヒツジ 漫画

押田はるか 著

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